【ワシントン=加納宏幸】トランプ米大統領が閣僚による政権発足後初の訪問先として日韓を選び、マティス国防長官を両国に派遣したのは北朝鮮核実験・ミサイル開発が米国民の生命を脅かすという強い危機感からだ。米政府はオバマ前政権での「戦略的忍耐」と称した対北政策の見直しに着手。差し迫った脅威を前に、日韓両国への米軍駐留経費の負担増という持論も棚上げする。
マティス氏は2日、訪問先のソウルで「アジア太平洋地域はトランプ政権にとっての優先課題だ」と強調した。
トランプ氏は大統領選で貿易不均衡を理由に日韓両国への米軍駐留を疑問視したが、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を示唆する中、トランプ政権内でアジアの優先順位は上がっている。
実際、トランプ氏は1月、ツイッターで北朝鮮による米本土攻撃を「そのようなことは起きない」と断言。北朝鮮への先制攻撃も視野にあると受け取られた。マティス氏も上院の公聴会で北朝鮮のICBM開発を「深刻な脅威」と位置付け、軍事的手段を含むあらゆる選択肢を排除しない考えを表明した。
マティス氏は北朝鮮による核・ミサイル開発を事実上、放置することになったオバマ前政権による北朝鮮政策について、国務省と協議して見直す考えを表明した。ホワイトハウスでもフリン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を中心に見直しが始まっている。
トランプ氏は大統領令で米軍を強化するため現在の脅威に対処する能力があるかの検討を命じ、マティス氏は2月下旬までに即応体制に関する報告書を提出する。マティス氏は、トランプ氏が目指す「米軍再建」に、安倍晋三首相や稲田朋美防衛相との会談を反映させることにしている。