環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は9日の参院本会議で承認され、関連法も成立した。TPP発効を見越し、安倍晋三政権が急いできたのは農業の競争力強化だ。トランプ次期米大統領の脱退表明で発効は厳しくなった。それでも、構造的な問題を抱える日本の農業はTPPの有無にかかわらず改革を進める必要があり、改革の実効性の確保が課題となりそうだ。
農林水産省の統計によると、平成27年の農業就業人口は209万6700人で20年前の7年(413万9800人)から半減。平均年齢は59・1歳から66・4歳へと高齢化が著しい。農業で得られる所得は26年が2兆8319億円と7年の4兆6255億円から2兆円近く落ち込んでいる。
TPP発効で懸念されてきたのは、関税撤廃で海外の安い農産物が国内市場に流入し、日本の農産物が価格競争に負けることだ。
安倍政権は「(農業は)TPPの行方がどうなろうと危機的な状況に変わりない」(自民党の小泉進次郎農林部会長)として、体質強化に向け、改革を続ける考えを示している。
ただ、政府の規制改革推進会議が11月、農業の生産性向上と農家の収入増のため、1年以内に全国農業協同組合連合会(JA全農)の組織を刷新する改革案を示すと、自民党農林族などが急進的だと反発、最終案は自主改革を基本とする後退した内容になった。JA全農は来年3月に改革の方向性や具体策を示すとしている。