米国のトランプ次期大統領は21日発表したビデオ声明で、来年1月の就任初日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)脱退を通告すると表明した。選挙戦中に脱退を表明していたが、大統領当選後に明言したのは初めてとみられる。TPP参加12カ国は19日の首脳会合で国内手続きの加速で一致したが、トランプ氏の意思が変わらなかったことで、発効は極めて困難との見方が広がりそうだ。
トランプ氏は声明で来年1月20日の大統領就任から100日以内に実施する政策を説明。TPPについては「われわれの国にとって潜在的な災難となる」と述べ「脱退の意思を(他の参加国に)通知する」とした。代わって「米国に雇用や産業を取り戻す公正な2国間の貿易協定」に向けて交渉すると言及。日本に対する2国間協定の打診も検討するとみられる。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)は20日の首脳宣言で、あらゆる形の保護主義を排除する決意を表明したが、トランプ次期政権によるTPP離脱は貿易自由化の停滞を招きそうだ。
協定内容を変更し、米国を除く11カ国でのTPP発効を模索する動きが現実味を帯びる可能性もある。ニュージーランドのキー首相は米国が離脱した場合の「選択肢の一つ」としている。
トランプ氏は21日のビデオ声明で、就任後100日間で規制緩和や不法移民対策に力を入れるとも表明。不法移民の取り締まりで就労ビザ(査証)違反の調査を労働省に指示するほか、シェールガスなどエネルギー生産で複数の規制を撤廃するとした。