安倍晋三首相は23日午後、米国とペルー、アルゼンチンの3カ国歴訪を終えて帰国する。終盤国会に突入し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の承認と年金制度改革法案の成立に全力を挙げる方針だ。審議日程は窮屈になっており、政府、与党は今月30日までの国会会期の延長幅について本格的な検討に入った。北方領土問題と「共同経済活動」構想が焦点となる12月15、16日の日露首脳会談の準備も加速させる。
トランプ次期米大統領のTPP脱退通告の表明に先立つ21日、安倍首相は訪問先のアルゼンチンで「米国抜きでは意味がない。根本的な利益のバランスが崩れる」と話した。首相は帰国翌日の24日に参院TPP特別委員会の集中審議に臨む。民進党の蓮舫代表が質問に立つ予定で、トランプ氏との会談内容などをただす構え。首相は自由貿易の重要性を訴え、トランプ氏側に翻意を促す考えを説明するとみられる。
自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長は22日、都内で会期延長について意見交換した。野党が「年金カット法案」として反発する年金制度改革法案の成立を確実にするため、与党内では12月10日前後まで延長する案が有力だ。閣僚への問責決議案提出も念頭に、12月中下旬まで延長幅を確保すべきだとの声もある。帰国後、首相が政権幹部と擦り合わせる。
国会審議と並行し、与党の税制改正大綱や2017年度予算編成作業も大詰めとなる。首相は12月15日に地元、山口県長門市でロシアのプーチン大統領と会談し、翌16日に東京で再会談する。「平和条約締結交渉はプーチン氏と信頼関係がなければ解決しない。簡単な話でない」と指摘しており、重要課題と位置付ける対露外交でも正念場を迎える。