TPP瓦解の危機 9月の訪米でのクリントン氏と会談が裏目に (1/2ページ)

 米大統領選の行方を注視してきた日本政府にとって、ドナルド・トランプ氏の勝利は、明らかに「想定外」だった。来年1月のトランプ政権発足をにらみ、対米外交の練り直しを迫られることになった。

 「日米同盟は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟だ。その絆をさらに強固にしたい」。安倍晋三首相は9日夜、官邸で記者団に対し、トランプ氏への期待を表明した。だが、岸田文雄外相がテレビ東京番組で「(トランプ氏側と)関係が薄いという事実はあった。さまざまな人脈をたどって関係を模索した」と述べたように、新政権との関係構築はこれからだ。

 首相はさっそく、河井克行首相補佐官に対し新政権関係者と「徹底的に会うように」と指示。河井氏は14~18日に訪米し、国防情報局(DIA)局長を務めたマイケル・フリン氏らとの会談を調整している。

 首相は9月の訪米時、トランプ氏の対抗馬であるヒラリー・クリントン氏と会談。来るべき「クリントン政権」を見据えた異例の面会だったが、これが裏目に出た形だ。

 トランプ氏は在日米軍撤退や日韓の核武装容認に言及してきた。東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、安倍首相にとってトランプ氏の発言は非現実的な放言としか映らず、国務長官を経験したクリントン氏の現実的な安全保障観こそが歓迎できるものだった。