日比首脳会談、農業開発支援など署名 南シナ海「法の支配」重要性確認

フィリピンのドゥテルテ大統領(左)との会談に臨む安倍晋三首相=26日、首相官邸
フィリピンのドゥテルテ大統領(左)との会談に臨む安倍晋三首相=26日、首相官邸【拡大】

 安倍晋三首相は26日、フィリピンのドゥテルテ大統領と官邸で会談し、中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題に関し、「法の支配」の重要性や、国際法に基づき紛争や武力行使を平和的に解決することで一致した。首相は、アジア太平洋地域の平和と安定には米国の関与が必要だとして、対米批判を繰り返すドゥテルテ氏に融和と関係修復を呼び掛けたとみられる。

 会談後の共同記者発表で首相は、南シナ海問題について「地域の平和と安定に直結する、国際社会全体の関心事項だ」と指摘。ドゥテルテ氏は「フィリピンと日本は民主主義、法の支配の価値観を共有する。紛争があれば南シナ海も入るが、平和的に解決するという価値観の下に緊密に協力する」と述べた。

 両首脳はこの後、少人数会合を実施。首相は南シナ海における中国の主権主張を否定した7月の仲裁裁判所判断の尊重を確認したい考え。対米関係では、ドゥテルテ氏の真意を探りながら、日米比3カ国の連携維持を申し合わせ、中国を牽制(けんせい)したい意向だ。両首脳は9月にラオスで会談しており、今回が2回目。

 日本とフィリピンは今年、国交正常化60周年を迎える。両政府は会談に合わせ、海上警備能力の向上に向けたフィリピン沿岸警備隊への巡視船供与や、海上自衛隊の練習機貸与、ドゥテルテ氏が重視するミンダナオ島の農業開発支援について、実施のための交換公文への署名式を行った。ドゥテルテ氏は27日に天皇陛下と会見した後、帰国の途に就く。