日銀は8日、追加の金融緩和を決めた7月28、29日の金融政策決定会合での「主な意見」を公表した。日銀がこの会合後に突如打ち出した次回9月会合での金融政策の「総括的な検証」をめぐり、今後の金融政策運営に対する政策委員の緩和積極派と慎重派の見方に温度差があることが浮き彫りになった。
「金融政策の限界、副作用という考えを否定することが必要だ」
主な意見の中には、これまでにない強烈な表現を用いた積極派の主張もあった。金融政策運営に関する意見のうち、「その他」に分類された意見で、この続きには、長期国債買い入れなどの緩和強化策に対する意欲的な考えが示されていた。
一方、「その他」には、「年金の割引率低下を通じた企業財務や公的年金などへの悪影響が見込まれる」「(超長期国債の流動性低下は)国債買い入れの困難度の高まりを象徴しており、国債市場全体の将来の姿を先取りしている」など、慎重派の意見も盛り込まれた。
金融政策の“限界論”をめぐる両者の議論について、SMBC日興証券の丸山義正氏は「日銀では従来、金利の低下につながることであればすべて『是』としていたが、今回の主な意見を見ると、金融政策による利益とコストの両方を評価しようという姿勢が出てきた」と分析する。
日銀は7月会合で、上場投資信託(ETF)の買い入れ額を6兆円にほぼ倍増させたほか、企業や金融機関の外貨繰りを支援する措置が取られた。2%の物価上昇率目標の達成見通し時期は「2017年度中」に据え置かれた。
足元では、英国の欧州連合(EU)からの離脱決定や新興国経済の失速で世界経済の先行き不透明感が強まっている。次回9月会合では、検証の結果次第で大幅な政策変更を行うことも予想され、市場は警戒している。