天皇陛下は「生前退位」のご意向を示されたお言葉の中で、健康状態が悪化した場合、社会の停滞や国民生活に与える影響についても懸念を示された。陛下が即位された平成元年は、日本国内がバブル景気の最中にあった。その後、バブルの崩壊やデフレ、リーマン・ショックによる世界的な景気低迷など、日本経済のグローバル化に伴う変動要因は拡大している。
昭和61年暮れから始まったとされるバブル景気で、地価や株価は高騰した。平成元年12月29日には日経平均株価が終値の最高値(3万8915円87銭)をつけるなど、平成の景気をにぎわした。
だが、2年に大蔵省(現財務省)が土地関連融資の「総量規制」に踏み切ったことなどから潮目が変わり、株価や地価が下落。資産価格下落に伴う需要の縮小でバブル経済は崩壊した。不良債権処理の遅れから大手銀行の相次ぐ破綻に伴う金融不安が拡大した。
その後、景気の波は循環し、バブル崩壊後の4年度から27年度まで、名目GDPの成長率は4・6%減~2・2%増で推移した。
ただ、13年3月には政府が、物価が持続的に下落するデフレに入ったことを認定。長期停滞に見舞われた。また20年9月のリーマン・ショックなど、海外要因に伴う景気変動など、日本経済のグローバル化に伴う影響はより強まっている。
足元の景気は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安、株高などで緩やかな回復基調にあるものの、個人消費も設備投資もまだ力強さに欠けている。人口減少などの課題も抱え、政府は安定的な経済成長に向けた施策をさらに進める必要がある。(山口暢彦)