日銀・岩田副総裁「金融緩和縮小あり得ない」 市場観測を牽制

 日銀が市場との対話に四苦八苦している。岩田規久男副総裁は4日、横浜市内で講演後に記者会見し、2%の物価上昇率目標について「今までの金融緩和の程度を縮小することはあり得ない」と述べた。9月の金融政策決定会合で行う「総括的な検証」を機に緩和縮小に向かうとの観測を牽制(けんせい)した。2日には、黒田東彦総裁も「そうしたこと(緩和縮小)にはならない」と発言するなど、正副総裁がそろって観測を打ち消した格好だ。

 日銀は7月29日、9月の会合で、金融政策の総括的な検証を行う方針を公表した。これを受け、市場では、日銀が国債買い入れの減額に動くとの見方が浮上し、長期金利の急騰を招いた。こうした市場の見方について、岩田副総裁は「金融を引き締める方向は考えられない」と述べた。その上で、「2%の早期達成のために一番いい組み合わせを検証していく」と述べ、今後も量・質・金利の3次元を軸に緩和手段を検討していく考えを強調した。

 総括的な検証について、岩田副総裁は講演で「政策効果の波及メカニズムやそれを阻害した要因について検証したい」などと説明。消費税率引き上げや原油価格の急落などの「逆風」に対して講じた量的緩和拡大やマイナス金利政策導入といった措置がもたらした効果などを検証し、今後の政策に反映していくという。

 政府の経済対策と日銀の金融緩和との関係について、岩田副総裁は「金利が幅広くマイナス圏にあるもとで政府が財政政策を行えば、景気刺激効果は非常に強力なものになる」として、相乗効果に期待した。

 一方、市場ではいまなお、日銀が国債を直接引き受けて政府の財政支出を支える「ヘリコプターマネー」への期待がくすぶる。岩田副総裁は「その是非を論じることは建設的ではない」と述べ、否定的な考えを示した。