英国のEU離脱で、年内の大筋合意を目指す日本とEUとの経済連携協定(EPA)交渉には黄信号がともる。英国は自由貿易の推進派だけに、「交渉の推進力を失う可能性がある」(経済官庁幹部)。欧州各国で保護貿易主義が勢いづく可能性もあり、巨大自由貿易協定(メガFTA)推進を目指す日本の通商戦略の失速も、懸念される。
「(日EUのEPA交渉の年内の大筋合意は)厳しくなったかもしれない」。林幹雄経済産業相は24日の記者会見で、英国のEU離脱による交渉停滞の可能性を示唆し、危機感をあらわにした。
5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、英国のキャメロン首相は交渉の早期妥結に向け協力することを確認。膠着(こうちゃく)する交渉の進展に期待が高まっていただけに、林氏も「(この結果は)意外だった」とうなだれた。
仏独などEUの主流派はEPA交渉に意欲的だが、日本企業との結びつきが強い英国はいわば“別格”だ。EUからの離脱は強力な推進役を失うことを意味するだけでなく、仏伊などで保護貿易主義を唱える極右政党の台頭を促しかねない。