財務省が12日発表した2015年度の国際収支速報によると、海外との経済取引の全体像を示す経常収支の黒字額は17兆9752億円と前年度の約2.1倍に拡大した。5年ぶりの大きさで、東日本大震災後に全国の原発が停止し化石燃料の輸入が膨らんだ影響が本格的に表れる前の10年度(18兆2687億円)の水準までほぼ回復した。
原油安で輸入額が減って輸出入の差額である貿易収支が5年ぶりに黒字に転換したほか、訪日外国人の増加で旅行者のお金の出入りを示す旅行収支が2年連続の黒字になったことが貢献した。
経常収支の内訳は、貿易収支が6299億円の黒字となり、6兆5890億円の赤字だった前年度から大幅に改善した。4月発表の15年度速報値でも赤字が続いた貿易統計(通関ベース)と計上する時期や範囲が異なり、国際収支ベースで黒字に転換した。
輸入は前年度比11.8%減の72兆5057億円。原油や液化天然ガス(LNG)の減少が目立った。輸出は鉄鋼の価格下落などにより3.3%減の73兆1355億円だった。
海外投資から得られる利子や配当を示す第1次所得収支の黒字は2.9%増の20兆5611億円に達し、比較可能な1985年度以降で最大となった。
サービス収支は1兆2109億円の赤字だったが、赤字幅は前年度に比べ縮小した。このうち旅行収支は黒字額が1兆2731億円と約5倍に増えた。日本企業が海外から受け取る特許使用料など「知的財産権等使用料」の黒字も2兆4159億円に拡大した。
同時に発表された16年3月の経常収支は2兆9804億円の黒字だった。黒字は21カ月連続。