金融市場が揺れている。先月29日に日銀の黒田東彦総裁がマイナス金利導入を発表した後、一時的に円安株高が示現したものの、その賞味期限は恐ろしく短かった。9日には長期金利がマイナス圏に入り、確かに債券の世界ではマイナス金利効果がストレートに出たものの、これまでアベノミクスを支えてきたはずの株式市場は急激な下落に襲われた。こうした動きを予見できなかった日銀の金融政策運営能力に対して市場は懐疑的となり、今後いざとなれば金融緩和を繰り出すという文言さえ素直に受け入れられなくなっている。
一方で中央銀行の金融政策に対して懐疑的になっているのは、日本だけではなく信用リスク不安におののく欧州も同様である。両者に共通するのは、堅調な米国経済に対する通貨安を通じての金融緩和政策であり、ひとたび米国経済に暗雲が立ち込めれば、これまでの緩和政策が効果を持続するかどうかは疑わしいのである。この心理状態が今回の世界の金融市場の混乱に示現したと考えてよいだろう。
グラフは、市場がアベノミクス相場の起点と考えている2012年11月以降から直近までの株式と為替の関係を示している。縦軸に株式、横軸がドル円の水準で、約800日分を日々プロットしたものである。
両者の関係は相関係数で0.99と表現され、これは両者の関係が非常に高いという統計的な意味を持つが、明日からも同様であることが保証されているわけではない。現状のような相場付きが変わるような転換点では、往々にしてその関係が崩れることが多いことには注意が必要だ。