日本に先立ち2014年12月にマイナス金利を導入した欧州の金融大国スイスでは、一定額以上の預金を持つ顧客から利子を取る銀行も現れ、市民の生活に影響が出始めている。市民は預金を複数の銀行に分散させるなど「自衛」に励んでいる。
「自分の金を守るためにはやむを得ない」。ジュネーブ在住の30代の金融業男性がつぶやいた。プライベートバンク、ロンバー・オディエは昨年、10万スイスフラン(約1160万円)以上の預金を持つ顧客に年0.75%のマイナス金利を適用した。この銀行に口座を持つ男性は慌てて預金をいくつかの銀行に分散させ、同行の預金額を10万スイスフラン未満に抑えた。
男性によると、一定額以上の預金者にマイナス金利を課すプライベートバンクは他にもあるという。
オルタナティブ・バンク・スイスは今年1月から個人が保有する全ての当座預金に年0.125%以上のマイナス金利を適用した。広報担当者は「解約する顧客もいたが、たいていはわれわれの方針に納得していただいた」と説明する。
中央銀行が民間銀行に課しているマイナス金利は現在、0.75%。多くのスイス人が口座を持つ大手のクレディ・スイスやUBSは今のところ、大口顧客を除く一般個人にはマイナス金利を課していない。各行は顧客離れを防ぐため、対応に苦慮しているとみられる。