和食やファッションなど日本ブームが続くタイで、飲食や小売りといったサービス現場での接客技術の向上を図ろうという動きが広がっている。背景にあるのは、昨年末に発足した東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)やタイの参加が有力視されている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など市場開放への期待と、将来の労働力減に対する不安だ。こうしたなか、日本企業が昨年12月に開始した研修講座が話題を呼んでいる。
◆記憶に残るサービス
タイ人向けの研修講座を提供しているのは、ホスピタリティ&グローイング・ジャパン(東京都新宿区)が運営する企業向け研修教室「グローイング・アカデミー」。2012年に都内で設立、料金は一律定額で何度でも受講できるのが特徴だ。わずか3年で、東京のほか大阪、名古屋、福岡、横浜の5校に増え、導入企業数は1000社を超えた。
海外初となるバンコク校がお目見えしたのは昨年12月1日。現地責任者の齋藤哲取締役は「開校初年度だけで100社との成約を目指したい」と意欲を示す。
「ホスピタリティーとは、相手を思いやる心。お客さまの記憶に残るサービスの提供が必要です」。タイ人女性講師のパールさんが穏やかでゆっくりと語りかける声がバンコク校の教室に響き渡る。日本航空やトヨタグループなどの第一線で接客の経験を積んだパールさんを前に、受講者の表情は真剣そのものだ。受講者の職種は、飲食、クリーニング、警備、小売りと多岐にわたる。そのうちの一人が「自分たちだけでサービス向上をしようとしてもなれ合いになってしまった。(サービス熟練者のノウハウを学ぶ)機会がこれまでなかった」と、そっと感想を耳打ちしてくれた。