世界の株価は年明けから大混乱。国内の自動車株式も例外ではなく、年初から激しい株価調整の真っただ中にある。足元の業績はすこぶる好調ではあるが、円安メリットや過去最高の先進国新車販売台数などのこれまでの追い風を受け過ぎた業績への潮目の変化を意識せざるを得ない。中でも、トヨタ自動車の株価がさえず、昨年春の高値から1年弱で20%以上も大幅な調整を余儀なくされている。
世界トップレベルの収益性、規模を誇りながらトヨタが持続的に成長を実現できた評価は高い。昨年に、最大のライバル、独フォルクスワーゲンが排ガス不正で停滞を余儀なくされ、トヨタ独り勝ちが一段と目立つ。屋久杉の年輪に例えた堅実な成長を目指す「年輪成長」を信条とするトヨタは、少々の逆風でも抵抗力は強く、成長の罠(わな)にライバルが落ち自滅する中で相対的な優位性が目立っている。
トヨタの再生は、拡大主義のつまずきへの反省がスタートラインだ。危機を経験し、守りを固め、新工場投資を抑え、一台一台を丁寧に販売する経営姿勢に転じた。固定費を圧縮したところを、円安メリットに恵まれた。この「守りの経営」と「円安効果」という2つの大きな要素が現在の成功につながった。
次のトヨタの成長を支える成功要因とは何なのであろうか。その根本には、「TNGA」と先進・先端技術力の2つがある。トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ(TNGA)とは、エンジンやプラットフォーム(車台)のクルマのハードから、設計や調達のソフト領域も含めてクルマづくりを根本から全体的に見直す取り組みだ。新型「プリウス」はこの技術の頭出しであり、初期受注は非常に好調である。