2015.12.20 08:55
政府は19日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の署名を見据え、輸入関税の撤廃などで打撃を受ける畜産、酪農の経営安定化のための法案など7法案を、来年1月4日召集の通常国会に提出する方針を固めた。特別委員会を設置して協定と一括で審議する。平成28年度予算案が優先されるため、審議開始は4月以降となる公算が大きい。
TPP交渉の大筋合意を受け、政府は年内に影響試算を発表し、対策の予算規模の策定や具体的な制度設計に入る。来年2月以降、参加各国が協定に署名し、国会承認手続きに入る。
関連法案では、関税引き下げで安価な輸入品が増加して影響を受ける農林水産業や畜産、酪農関連について、牛肉、豚肉で収入が生産費を下回った場合、独立行政法人農畜産業振興機構が赤字を補填(ほてん)する経営安定特別対策事業を法制化。補填率は赤字分の8割から9割に拡大する。また、新たにココアなど安い輸入加糖調製品から調整金を徴収し、国内産糖の支援に充てることも盛り込む。
一方、日本の高品質な農林水産物の輸出促進のため、地域特有の農産物や食品を国がブランドとして保護する「地理的表示(GI)」の保護体制を強化する地理的表示法の改正を目指す。具体的には、TPP参加国のうち、日本と同水準のGI制度を持つ国を農水省令で定め、対象国と国際約束で保護すべき農林水産物を指定し、相互にGIを保護できる体制を整える。
さらに、TPPのルールに沿った法改正も進める。著作権法改正案には、著作権保護期間の延長や著作権侵害の一部非親告罪化を盛り込む。このほか、公正取引委員会と事業者の合意によって事案を解決する仕組みを盛り込む独占禁止法改正案▽輸入が急増した場合に関税を引き上げる緊急輸入制限(セーフガード)などを規定した関税暫定措置法などの改正案▽医薬品や医療機器の製造販売の認証を行うTPP参加国の民間第三者機関を日本政府が指導・監督できるようにする医薬品医療機器法改正案▽特許権の存続期間延長を盛り込んだ特許法などの改正案-も提出する方針だ。