テイン・セイン政権は、国内の経済政策でも改革に着手した。産業界に対して自由化や規制緩和を打ち出したほか、農業の支援も推進している。いずれも大きな成果を出すのはこれからだが、軍政時代はマイナスだった政策をゼロ水準に戻したと評価できる。このほか、メディアの自由化や集会と労働組合活動の合法化、人権委員会の設置など政治社会改革も進み、国民の生活は経済的にも社会的にも水準が高まり始めている。
ミャンマーが国際社会に復帰して再び成長軌道に乗る契機をつくったことがテイン・セイン政権の最大の功績だ。国民は民政移管後の約5年をどうみているのか。間近に迫った11月8日の総選挙でテイン・セイン政権への審判が下される。(談)
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【プロフィル】工藤年博
くどう・としひろ 1994年ケンブリッジ大学大学院修士課程修了、アジア経済研究所入所。2000~03年ヤンゴン経済大学客員研究員。帰国後、同研究所の新領域研究センター長、研究企画部長などを経て15年4月から現職。52歳。東京都出身。