□ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター副主任研究員・川村晃一
■政権基盤の弱さ露呈 与野党対立や閣僚人事失態
2014年10月20日にジョコ・ウィドド(通称・ジョコウィ)氏が第7代インドネシア共和国大統領に就任して1年を迎えようとしている。庶民出身で「働く内閣」を掲げ、成長だけでなく富の分配にも目を向けるジョコウィ大統領に対する国民の期待は高い。ジョコウィ政権が発足して間もない14年11月17日、国家財政の大きな負担となっていた燃料補助金の削減を発表。さらに、15年1月1日にはガソリン補助金制度を撤廃し、浮いた予算を低所得層の教育・医療無償化に回すとともにインフラ開発にあてる方針を表明するなど、国民の期待に応える政策を打ち出し喝采を浴びた。
一方で就任早々に政権基盤の弱さが露呈し15年の国内総生産(GDP)成長率が1~3月期に4.72%、4~6月期に4.67%と低迷するなど、順風満帆な船出とは決して言えない状況にある。ジョコウィ政権の1年間の軌跡を4回にわたって追う。
◆新興国のモデル
インドネシアにとって14年の大統領選挙は非常に重要な節目だった。ユドヨノ前政権の04年から14年までの10年間でインドネシアへの国際評価が大きく高まったからだ。04年当時のインドネシアは、政治的にまだ不安定とみなされ、1997年のアジア通貨危機による経済打撃から立ち直っていなかった。