今回解禁されるのは、人材派遣業者がフィリピンなどから外国人を招聘(しょうへい)し、家庭などに家政婦として送り込む事業。これまでも外国人の外交官や企業経営者などに限って、外国人家政婦を連れて来ることができる特例があったが、今後は広く日本の家庭でも、家政婦を依頼することができるようになる可能性が出てきた。
可能性と書いたのにはわけがある。今回の規制緩和が、国家戦略特区内に限られたものだからだ。今のところ、大阪市や横浜市、川崎市などがこの制度の活用に前向きな姿勢を見せている。
バリバリ働く女性にとっては間違いなく朗報だろう。ただし問題は費用。労働組合などの反対を受けて、「日本人家政婦と同等」の賃金を支払うルールになったからだ。参入を検討している家政婦派遣会社、シェヴの柳基善CEO(最高経営責任者)によると、「1カ月フルに家政婦を使うと20万円はかかる」という。今度は費用が大きな重圧になりかねないのだ。
自民党内では、こうした家政婦への支払いなど家事代行の経費を必要経費として認める「家事支援税制」が検討されたことがある。先進各国では当たり前の制度だが、財務省の反対で棚上げされたままだ。国会の特区での解禁は突破口には違いない。
だが、本当に女性に活躍してもらう社会をつくろうと思えば、税制を含めたインフラの整備が待ったなしである。
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【プロフィル】磯山友幸
いそやま・ともゆき 早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務めて、2011年に独立。52歳。