□東京大学政策ビジョン研究センター教授・渡部俊也
東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の国内総生産(GDP)は合計で2.4兆ドル(約298兆円)、平均経済成長率が4.5%であり、人口も2020年には6.9億人に達する。そして本年末にはASEAN経済共同体が設立され、いよいよこれらの国々の経済統合が進められる。欧州連合(EU)との共通点もあるが、ギリシャなどに象徴される問題点から学んだ部分もあり、ASEAN経済統合では通貨統合は含まれない。一方、関税撤廃や労働者の移動解禁、出資規制緩和などが進む見通しであり、世界中の期待を集めている。日本企業においては従来からASEAN進出は活発であったが、さらにASEANへの投資に拍車がかかっていくことが予想される。
◆模造品対策が課題
一方、ASEAN進出にはさまざまなリスクがあることも間違いない。ASEANの国際機関の調査によれば、ASEAN進出に際して事前に検討されるファクターとしては労働コストや市場の大きさなどが中心である。ところが進出後に俄然(がぜん)重要な課題として浮上してくるのが、模倣品などの知的財産権の問題である。デッドコピーの対策として重要な商標権制度の整備や、その取り締まりの実効性などについては、ASEAN地域の多くの国で課題を抱えている。