2015.7.7 06:44
【アテネ=内藤泰朗】欧州連合(EU)が求める厳しい緊縮策は、もうご免だ-。ギリシャの命運を決める5日の国民投票は、失うものがない貧困層を中心とした「持たざる者」がEUの財政再建策反対派の勝利の原動力となった。若者たちは5日深夜、アテネ中心部で抱き合って「歴史的な勝利」を祝った。だが、銀行から現金が消えるという前代未聞の事態に突入しつつあるギリシャの国民の多くは、迫り来る生活破綻の足音におののいている。
歓喜と熱狂の夜から一夜明けた6日、多くの国民の関心は銀行が営業を再開できるか否かに移った。反対派の勝利は、銀行預金のある中高所得層や高齢者などの「持てる者」にとっては悪夢に他ならない。彼らの多くは緊縮策に「賛成」を投じたとされるが、勢いで及ばなかった。
「いったい何が起きているんだ」。アテネ中心の現金自動預払機(ATM)で6日、長蛇の列に並んでいた男性(46)は、バルファキス財務相辞任のニュースに驚きの声を上げた。7日からは1日の引き出し限度額が1人60ユーロ(約8千円)から20ユーロに引き下げられるとの噂を聞き、行列に並ぶことにしたという。