【新興国に翔ける】近代的小売りだけではもうからない (1/2ページ)

2015.6.30 05:00

 □スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹

 前回6月16日付で、VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)市場は、市場や露店などの伝統的小売りが圧倒的多数を占めることを理由に、それらの商品取り扱い店舗の獲得が最重要であることを述べた。今回は、続編として、伝統的小売りが重要なもう一つの理由を解説する。

 結論から言うと、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも特にVIP市場では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの近代的小売りだけを相手にしていてももうからない。理由は、近代的小売りから要求される各種リベート(報奨金)にある。ASEAN市場で大きな成果を上げている先進グローバル企業が伝統的小売りとの取引拡大にこだわる理由の一つは、リベートの支払いをほとんど必要としないからだ。彼らはASEAN市場の特性を深く理解し、近代的小売りにイニシアチブ(主導権)を握られない事業運営をしっかり行っている。

 近代的小売りは、商品を陳列する際に高いリスティング・フィー(商品取扱料)や棚代、売り子代、特設ディスプレー代、キャンペーン支援金など、各種販売協力金をメーカーに求める。数多くの店舗を持つ主要近代的小売りともなれば、その額は膨大で、商品ジャンルごとに数十万円から数百万円にも上る。例えば、フィリピンの主要4大小売り企業の一つであり、最も店舗数の多いピュアゴールドの場合、まず、1商品につき1店舗当たり約9000円のリスティング・フィーを取る。同社は、ルソン島を中心に160店舗以上を展開している。全店舗で144万円がかかる計算になる。

 実際には、商品を奥向きに1列に置いても顧客の目につきにくいため、横に2列、3列と増やしていくことになり、費用も掛け算で増えていく。もちろん、商品数が増えれば増えるほど費用がかさむ。また、同じ棚でもより良い場所に置くことが望ましいが、これも棚代となって跳ね返ってくる。

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