2015.4.15 05:00
2012年に福島に行った際、JMCマグネット事業部の佐藤さんに巡り会った。彼の会社はセシウムを吸着して除去する技術を持っている。磁性化ゼオライトを水田にまいて、磁石で回収するというもので、マグネテックジャパン、愛媛大学との共同プロジェクトだ。この方法では、水中に出てきたセシウムは効率よく回収するのだが、粘土に吸着したセシウムがどうしても除去できないということで悩んでいた。
そこで私は微生物を利用する提案をした。納豆菌は貪欲にカリウムとその化学的類似物のセシウムを体内に吸収し、水中に溶かしてくれるはずだ。それに佐藤さんの除去技術を適用すればうまくいくということを示唆させてもらった。当時、私は地球の原生代の海洋環境を堆積物から復元する研究を手伝っていたので、微生物がセシウムを含むミネラルを貪欲に吸収することを知っていた。
2011年には、理研、筑波大、慶応大、水産総合研究センターが協力して、水中のセシウムを微生物に吸収させる試験研究にも参加させてもらっていた。
佐藤さんによると、それまではセシウムを水に溶かし出すにはシュウ酸などの強い酸を用いるしかなく、水田の土壌環境を荒らしてしまう可能性が高かったので農家が躊躇(ちゅうちょ)していた。納豆は食品なので、土壌への影響はあったとしても軽微だろうし、むしろ土壌環境を良くする可能性もあるので農家が歓迎するかもしれないとのことだった。
実行力抜群の佐藤さんは、福島の農業団体である「NPO法人 がんばろう福島、農業者等の会」と連携し、田植え前に水田の土をならす代かきの際に、肥料として市販されている微生物資材(納豆菌、乳酸菌、酵母の混合物とされている)をまいたあと従来通りの除染作業を行ったところ、放射能が半分になり一定の成功を収めた。私の狙い通り、微生物集合体がセシウムを積極的に吸収し、水中に溶けやすい形に変えたのだろう。