政府が今年初めに改訂した2024年度までの宇宙政策指針「宇宙基本計画」に、夢のプロジェクトが引き続き盛り込まれた。宇宙空間で太陽光から作り出した電力を地球に送り込む「宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System=SSPS)」の設置計画だ。莫大(ばくだい)なコストがかかるため採算性が疑問視され、一部の専門家から「ばかげた計画」と揶揄(やゆ)されるものの、政府は30年代の実現を目指して研究開発を進める方針を変えていない。民間企業が地上実験に成功するなど夢は膨らむものの、SF映画やアニメなどにも登場するSSPSが日の目を見る日は実際に訪れるのだろうか。
無線送電に成功
三菱重工業の神戸造船所(神戸市)で2月24日、神戸港の岸壁沿いに送電側と受電側の2枚の大型パネル(高さ13メートル、幅8メートル)が向かい合って置かれた。その距離は500メートル。制御室でスイッチを入れると、10キロワットの電力が電波に変換されて送信され、受電パネルの上部に青いLED(発光ダイオード)ランプが点灯し、同社の略称「MHI」の文字が浮かび上がった。
宇宙空間に浮かべた太陽光パネルで発電し、マイクロ波と呼ぶ電気に変えて地球に送電する-。それまでよりも10倍近い距離の無線送電に成功した三菱重工の実証実験は、SSPSの基礎となる技術だ。宇宙では天候や昼夜を選ばず、常に直射日光を浴びて発電できるため、発電量は最大で地上の10倍となる。二酸化炭素(CO2)を排出せず温暖化対策にも役立つ。人類にとって、まさに夢の計画だ。