成長鈍化が明確な中国経済とどう向き合っていくべきか、アジアを代表する企業の間に悲観論と楽観論が交錯している。悲観論の代表格は、タックスヘイブン(租税回避地)の英領ケイマン諸島に香港から拠点を移す長江実業グループだ。アジアきっての富豪で華僑社会のトップ経済人の李嘉誠氏(86)が率いている。一方、楽観論の代表格は巨大国有企業の中国中信集団(CITIC)に総額1兆2000億円の資本参加を決めた伊藤忠商事とタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループだ。20年以上続いた高度成長の終焉(しゅうえん)を迎えた中国経済に対する認識の差はどこにあるのか。
無視できぬ政治の力
市場に衝撃が走ったのは1月9日。長江実業が傘下のハチソン・ワンポア(和記黄埔)を合併した上で、不動産とそれ以外の事業の新会社2社に改組、同時に事業統括の拠点となる新会社をケイマン諸島に登記すると発表したからだ。香港の上場は維持する。
長江実業などのグループは、習近平指導部が発足してから2年あまりの間に、中国本土で不動産の資産売却や投資先の整理を徐々に進める一方で、英国の通信会社への出資など欧米での投資を拡大する動きを強めていた。市場は、中国経済や習指導部の方向性に対する李氏のリスク感覚が働いたと受け止めている。