【専欄】中露間で苦悩するモンゴル 拓殖大学名誉教授・茅原郁生 (1/2ページ)

2014.11.25 05:00

 去る9月上旬に筆者は20年ぶりにモンゴル国を訪れた。垣間見たモンゴルの印象は、まず人口集中によるウランバートル市の無秩序な膨張や外資の参入、圧倒的に多い日本車と交通渋滞などといった激変ぶりであった。他方でカラコルムに通じる雄大な草原と牧民生活などは変わっておらず、また中国・ロシアの2つの大国に挟まれたモンゴルが抱える苦悩にも変わらぬものを感じた。

 モンゴルと隣接国とは相克を繰り返してきたが、近代では大国との関係に翻弄されてきた。モンゴルは、13世紀にチンギス・ハーンに率いられて欧州をも席巻する大帝国となり、その後、中国や朝鮮半島を抑えて元王朝を興し、わが国への元寇の襲来に続いた。しかしその後衰退し、清朝の支配下に置かれた。辛亥革命を契機とした独立宣言も、中国・ロシアの思惑が入ったキャフタ条約(1915年)によって実現が遅れたが、その後スフバートル将軍の革命により独立を果たした。しかし1924年に社会主義化したモンゴルは冷戦下でソ連圏の一角に組み込まれ、激化する中ソ対立の接点に立たされてきた。ペレストロイカ政策に連なる冷戦終結で、ソ連圏から離れて民主化を達成したものの、今日では経済的に中国依存を強めている。

 冷戦後のモンゴルは、全方位の善隣友好外交と中露両大国との等距離外交により存続を懸けてきたが、思惑の異なる強大国のはざまにあっていかに等距離を維持するかが最大の課題となっている。

 今日、アジアを巡る安全保障環境は中国の急速な台頭と米勢力の退潮などから流動化している。その一環でモンゴルを巡る中露両国のせめぎ合いは反復されている。現にモンゴルは石炭輸出などで経済的には中国への依存を深めており、大規模投資をお土産とした8月の習近平国家主席のモンゴル訪問を大歓迎しながら、同時に過度の中国依存への警戒感も浮上している。

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