7~9月期のGDP速報値は事前の市場予測を大きく下回り、4月の消費税率引き上げ後の景気回復の遅れが鮮明となった。個人消費はプラスに転じたものの伸び悩み、設備投資や住宅投資の回復も遅れている。安倍晋三首相は消費税率の10%への引き上げ時期を延期する方針を固めているが、その判断をさらに後押しする材料といえそうだ。
マイナス成長となった最大の原因は、個人消費と設備投資の回復の弱さだ。個人消費は4月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減もあり、7~9月期には大きく回復するとみられていたが、夏場の天候不順に加え、自動車や家電製品などの高額消費はなお力強さに欠ける実態が浮かび上がってくる。
設備投資も、市場では大半がプラスを見込んでいたが、結果は2四半期連続のマイナス成長となった。
こうした弱さを補うはずの公共事業や輸出のプラスの寄与も小さく、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「景気の牽引(けんいん)役が全くいない状況」と指摘する。
景気が後退期にあった平成24年7~9月期と10~12月期以来となる2四半期連続のマイナス成長となったことで、消費税の再増税延期はほぼ決定的となったが、景気の足元や先行きにも懸念が広がりかねない状況だ。