--増税を延期した場合のリスクは
「地方経済の回復の遅れなど景気を重視するのは分かるが、消費税の引き上げ判断では足元の景気動向に拘泥すべきではない。景気回復を待ってから財政の外科手術をすればいいというが、当時の金融危機に当たるのが今の財政だ。消費税増税を延期しても、その際にまた、景気に配慮する付帯条項がついて、永遠に増税を先延ばしする議論の入り口でしかない。財政再建に正面から取り組まなければ、金利急騰など市場リスクに手は打てない」
--物価上昇と消費税増税で家計の負担は増している
「消費税を払うことは国民が医療や介護などのサービスを買うことだ。個人情報を1つの番号で管理するマイナンバーの導入を踏まえ、社会保障の仕組みを分かりやすく記した『社会保障手帳』を配ってもいい。消費税増税を機に、社会保障制度を皆で支え合い、より良くするための国民的な議論を本格化するべきだ」
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【プロフィル】吉川洋
よしかわ・ひろし 東大経卒。1996年、東大大学院経済学研究科教授(現職)。2010年4月から財政制度等審議会会長。東京都出身。63歳。