外国為替市場で円安ドル高の動きが強まっている。1日に一時1ドル=110円台まで下落した円は、その後やや買い戻されたが、3日のニューヨーク外為市場では、米雇用統計の改善を受けて大幅反落し109円台後半と再び大台突破をうかがう動きとなった。これまで円安は日本経済にプラスとの見方が支配的だったが、輸入物価の上昇などマイナス面も指摘されはじめており、専門家の間でも見解は分かれている。(塩原永久、藤原章裕)
「円安が一気に進むのは望ましくない」
日本総合研究所の山田久チーフエコノミストはこう指摘する。海外への生産移転や原発停止に伴う化石燃料の輸入増加で、日本は「輸入が輸出を上回るようになった」という。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8月まで26カ月連続の赤字を記録している。
山田氏は貿易構造の変化と円相場の株価への影響を分析し、「かつてのように『円安=景気にプラス』とはいえなくなっている」と説明する。その上で、1ドル=120円台半ばを超える水準となった場合、日本経済に明らかにマイナスとなると試算した。
これに対し、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、「円安は115円でも130円でも日本経済にはプラス」と強調する。貿易収支は赤字でも、所得収支(海外から受け取る利子や配当)の黒字が膨らんでいるため、「円安は海外から日本への所得流入をかさ上げする」という理屈だ。