ジャカルタの深刻な渋滞解消の切り札として、大量高速鉄道(MRT)の第1期建設工事が今年4月から始まり、8月中旬までに地下鉄部分となる都心部6駅の建設が着工された。第1期はこれら6駅を含む13駅の設置と15.7キロの線路敷設で、2018年開業を目指す。
著しい経済成長と人口約2億5000万の市場で注目されるインドネシアの首都ジャカルタは、交通基盤の整備でシンガポールやマレーシアに大きく後れを取っている。このため、ジャカルタ特別州政府はMRT建設をはじめ、専用路線バスと高速道路の拡充に力を注ぐ。
一方で、インドネシア国鉄の首都圏鉄道は、日本で使用された中古車両を導入するなど、ここ1年で目覚ましいサービス改善を進めており、MRT開業を見据えた都市交通の試金石として注目されている。
◆冷房車を実質値下げ
首都圏鉄道はかつて、冷房なしで窓も扉も全開にしたまま走るエコノミー列車と冷房列車の2種類が運行していた。料金は一律でエコノミーが約15円、冷房列車が約80円。安いエコノミーに需要が集中し、屋根の上にも乗客が鈴なりとなっていた。そんなエコノミーの車内は満員の人いきれで暑くて不快な上、物売りが行き交い、スリの温床だった。
首都圏鉄道の大きな分岐点となったのが、昨年6月の切符の電子チケット化に伴う運行改革である。エコノミーを廃止し、全列車を冷房化。さらに料金体系を初乗りが約20円で乗車区間によって高くなる変動式に切り替えた。これが実質的に冷房列車の大幅な値下げとなり、切り替え当初は燃料費高騰によるバスなどの運賃値上げと重なったため、首都圏鉄道の乗客は飛躍的に伸び、朝夕のラッシュ時のほか常にほぼ満員となった。