■世界との橋渡し役期待
元日本留学生は、日本語の読み書き能力を持つだけでなく、日本の社会・文化を深く理解する人材として、日本とアジア各国、世界を結ぶ橋渡し役として結節点にある貴重な人材である。
スリランカの元日本留学生のリーダーのモンテ・カセム氏は、自ら主催者となって「グローバル・ボイスイズ・フローム・ジャパン」という事業に取り組んでいる。その目的は、現役外国人留学生と元日本留学生の声に耳を傾け、その目を通して見る日本のありのままの姿を世界に伝え、日本と世界の相互理解を促進することだという。ウェブサイトで世界からコラムを募集し、最終選考に残った入選作を世界に発信する事業だ。日本留学経験者として、日本と世界を結ぶための日本からの発信を企画するというその志の大きさに驚嘆させられる。
◆経済協力での位置づけ
グローバル化が進展する中、日本の企業にとって、元日本留学生は、例えばアジア展開の円滑化に大きな貢献をしてくれている。だが一方で、日本の官民の経済協力施策の中で、その担い手として彼らが十分に生かされていないのも事実だ。
発展途上国への政府開発援助(ODA)については、(1)ハード中心に偏っている(したがって、人材育成等ソフト面への配慮が足りない)(2)リスク回避のため相手国政府の要請を条件としている(したがって利権化や非効率性が著しい)(3)予算支出、形式重視(霞が関中心)で現場での真の機能に配慮が足りない-などの問題点がある。
ハードの支援(産業、教育、医療等々の機材・施設提供)については、これまで巨額の予算が拠出されてきたが、担い手としての現地人材への配慮が足りない等のため、歴史に誇れる成果が残らず無駄遣いに近い実績となっていないか。