【ドネツク(ウクライナ東部)=遠藤良介】ウクライナ東部2州で実施された「住民投票」では、不正投票を疑わせるケースが相次いだ。
ウクライナ保安局は11日、ドネツク州マリウポリ近郊の検問所で、あらかじめ「賛成」に印の付けられた投票用紙1万枚を押収したと発表。このほか、1人で何枚も投票するなど二重投票の目撃例も少なくない。
投票用紙は白黒コピーの紙片にすぎず、偽造を防ぐ手立ては講じられていなかった。各投票所では2012年の選挙人名簿に基づき有権者を確認するとされたが、実際は個人情報を記帳するだけで誰でも投票が認められていた。1人の有権者が投票所を巡回し、何度も票を投じることが可能だった形だ。
そもそも、ウクライナ憲法は「領土の変更に関する問題は全土での住民投票によってのみ決定される」と規定しており、地域単独の住民投票を認めていない。今回は、東部2州で行政庁舎や警察署を武力占拠した親露派の指導部が一方的に投票実施を決めたものだ。
ロシアが3月、クリミア併合の根拠としたのも、武装勢力が中枢施設を占拠する中で行われた、同様の「住民投票」だった。