12日に始まった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の首席交渉官会合では、難航している知的財産など3分野の共通ルール作りにどう道筋を付けるかも課題となる。
米国は、日本との関税撤廃・引き下げなどをめぐる2国間協議の進展をてこに、全体交渉も加速したい考え。
だが、新興国には米国主導のルール作りに依然として慎重な意見が残っており、合意へのハードルは高い。
鶴岡公二首席交渉官は12日、現地で記者団に対し、「交渉が最終的に収斂(しゅうれん)しつつある中で、困難な課題が浮上している」と述べ、(1)知的財産(2)国有企業改革(3)環境・労働-を挙げた。
最難関の知的財産では、新薬の特許や著作権の保護期間が最大の論点だ。米国は製薬会社の収益確保を目指し、新薬の開発企業が市場を独占できる「データ保護期間」を10年に延長するよう主張。これに対し、マレーシアは特許切れの安価なジェネリック医薬品(後発薬)が入手しにくくなると反発する。
2月のシンガポール閣僚会合では、米国が新興国での保護期間を短くする案などを示して課題が10カ所以下にまで絞られたが、「残ったのは最も対立が激しい部分」(通商筋)だ。
国有企業改革では、米国と、マレーシア、ベトナムなど新興国の意見がぶつかってきた。米国は、民間企業の市場参入を妨げているとして補助金など優遇措置の廃止を主張。国有企業が多いベトナムなどは、雇用への影響などを懸念して急な制度変更に慎重で、12カ国は海外展開しない企業を対象外にするなど妥協案を検討している。
環境・労働では、新興国が経済成長を優先して不当に基準を緩めないことを米国側が主張。ベトナムなどは一定の理解を示すが、先進国並みの基準強化には難色を示しているという。(ホーチミン 三塚聖平)