安倍晋三首相の諮問機関の政府税制調査会は12日、法人税改革を議論するグループの初会合を開き、法人実効税率引き下げに向けた議論を本格的に始めた。座長を務める元経済財政担当相の大田弘子政策研究大学院大教授は論点整理で「税率引き下げが必要」と明記し、具体化に向けて動き出した。
論点整理では最大の焦点となる法人税率引き下げに伴う税収減について、課税対象の拡大や所得税、地方税の見直しで穴埋めする案が示された。しかし、消費者や地方自治体などの反発は必至で、抜本改革に向けたハードルは高い。
日本の国・地方の法人実効税率は35.64%(東京都、復興増税分除く)。25%程度の中国や韓国などに比べて高い。大田座長も論点整理で「国際相場に照らして高い」と指摘した。
実効税率の引き下げは、企業の競争力強化になる。安倍首相も1月のダボス会議で「本年、さらなる法人税改革に着手する」と、事実上の国際公約をするなど強い意欲を示した。
ただ、財務省の試算では税率を1%引き下げた場合、約4700億円の税収減となる。アジア並みの25%程度にした場合、約5兆円の税収が失われ、財政悪化につながる恐れもある。論点整理では、代替財源を確保するため、設備投資減税など租税特別措置の縮小・廃止を含めて「課税ベースの拡大が不可欠」だと指摘した。
また、所得税や地方税の見直しにより財源を捻出することも検討する方針を示した。政府税調は今後、税率引き下げが経済に与える影響などを議論し、税調の総会に報告。政府が6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に反映することを目指す。