いよいよ博打(ばくち)好きの長年の夢、カジノ法案の国会通過が現実味を帯びてきた。
賭け事の大好きな国会議員が超党派の圧力団体を組織し、産学協同のカジノ推進団体のロビー活動も忙しい。甘い蜜がしたたるおいしい案件だから博打場をおらが村への誘致合戦もすでに始まっているらしい。と、ここまでの話は大ウソである。
カジノと聞いてかつての騒々しさとたばこの煙だらけのパチンコ・パチスロや、ゴミとオヤジだらけの公営ギャンブル場を想像する人も少なくないだろう。が、博打好きによく聞いてほしいのだが、カジノの国内導入構想はみなさんを喜ばすものではない。カジノを導入する真の目的はただ一つ、海外の観光客を誘致してお金を落としてもらい、国内の雇用を増やし、経済を活性化させることにある。
そのための中心となる戦略が「IR」の建設だ。IRとはカジノを中心とした複合型娯楽施設のことでしかもカジノのイメージをまったく匂わせないところにその戦略の妙がある。
たとえばラスベガスが世界最大のエンターテインメントシティーだとはいえいまだにイメージはギャンブルのラスベガスだ。一方、海外からの観光客が日本の2倍、年間2000万人以上が訪れるとされるシンガポールには、あまりギャンブルのイメージがない。シンガポールは淡路島程度の国土に500万人余が住む小国で世界遺産はおろか温泉も富士山もない。それがなぜ日本の2倍もの観光客を誘致できるのか。その裏にはシンガポール政府と米国のカジノ資本が開発したしたたかなロケーション・エンターテインメント・マーケティング、つまりカジノ導入戦略があった。