軟調な展開が続く今年の東京株式市場は、値動きの荒さが目立つ。海外経済の減速リスクが台頭すると投資家の安全志向が世界的に強まり、比較的安全な資産とされる円を買う動きが日本株売りを誘発、これに通貨と株を同時に大量売買するヘッジファンドの存在が拍車をかけているためだ。上場企業の平成25年4~12月期決算は好調に推移しているが、日本株の値動きは国内景気より海外要因との連動が強まっている。
今年の取引は3日までの20営業日のうち、平均株価の終値が前日比で200円超変動した日数が5割に相当する10日に達し、値動きの振幅が大きくなっている。このうち7日は株価が下落。新興国懸念が強まった1月23日以降の平均株価の1日当たりの変動率は1・7%で、米国の1・0%を大きく上回る。
楽天証券経済研究所の窪田真之チーフストラテジストは、「要因は、1143円安と急落した昨年5月23日と同じだ」と指摘する。米量的金融緩和の縮小観測をきっかけに昨年9月まで日本株は乱高下した。今回も米国の追加の緩和縮小で、リスク資産から資金が逃げ出すとの見方から世界の主要株価が下落した。
短期的に利益を上げようとする海外ヘッジファンドは、リスク回避局面では安全資産とされる円への買い注文と日本株売りを同時に仕掛ける。海外投資家の日本株取引は今年に入って3週連続で売り越し。売越額は約4300億円で、株価指数先物を入れると1兆円を超える。
市場では、「個人が買わなければ、株価はもっと下がっていた」(野村証券の田村浩道チーフ・ストラテジスト)と、少額投資非課税制度(NISA)が相場の安定に一役買うことを期待する声もある。一般的に個人投資家は、株価が下がったところを買う「逆張り」取引の傾向が強いとされるためだ。
ただ、株安が長引けば投資意欲がしぼみ、個人も売りが膨らみ、株価の下落基調が強まる心配もある。