世界の資金動向が一変している。昨年、日本株のパフォーマンスは世界最高水準だったが、他の先進国のパフォーマンスもおおむね非常に高かった。それに対して新興国は中国をはじめ、マイナスになった国が多い。新興国を売り先進国を買うという動きは今年に入っても、継続している。
世界の資金が逆流し始めた原因の一つは、新興国にマネーを流し込んできた米金融当局による量的緩和政策が縮小された(テーパリング)ことにある。これにより先進国が新興国から資金を引き揚げ、国内や他の先進国への投資に回している。
この20年、特に2000年代に入って、先進国の多くは中国を中心にアジア新興国に投資してきた。しかし、昨年5月のテーパリング表明によりこの環境は一変。新興国からの“キャピタルフライト(資本流出)”が本格化し、多くの国でトリプル安(株、債券、為替)の悪夢に悩まされる状況に陥った。
昨年9月の20カ国・地域(G20)首脳会合による懸念表明などを受けてテーパリングが先延ばしにされ、一時的にこの流れは沈静化。だが、今年1月に実際に実施されると再び大規模なキャピタルフライトが発生し始めている。
資金逆流には、より本質的なもう一つの理由がある。金融規制やストレステストなどを通じて、先進国が資金を抱え込む構図になっていることだ。米国では今年の銀行ストレステストのシナリオとして、米株が29.4%、アジア新興市場の株価が40.5%急落する状況を設定している。つまり、アジア新興国株を多く保有するとストレステストに耐えられない。
米国は、規制やストレステストを通じて国内資金の抱え込み、テーパリングによる国内資金の減少を防ぐ政策もとっている。
これを簡単に説明すれば、穴の開いたバケツの穴を塞げば、流し込む水の量を減らしても、水量は減らないという理屈である。