タイ経済は、タクシン元首相をめぐる政治的対立が続くものの、2012年には実質6.5%成長を記録し、大洪水の影響で0.1%成長となった11年からの回復を、見事に果たした。13年も4.2~5.2%の成長と予測されており、メコン地域の製造業の拠点としての地位は万全だ。なかでも12年の自動車生産台数は初めて245万台を超え、さらに輸出も過去最高を記録した。
11年の大洪水ではバンコク周辺の工業団地が浸水し、進出企業が大きな被害を受けた。その復興のための直接投資もあるが、タイへの投資意欲は強い。タイ投資委員会(BOI)によると、12年の直接投資(認可ベース)は1357件(対前年比50.1%増)で、金額では97.1%増の5489億5400万バーツ(約1兆7400億円)を記録。このうち日本からの投資額は761件、3484億3000万バーツと大半を占めた。
一方、サービス業では、外国人訪問客数が12年には2235万人で対前年比で16.2%増となった。国別では中国が最も多く、次いでマレーシア、日本、ロシア、韓国の順。12年はバンコクでの大規模デモや大きな洪水がなかったことから、大きな伸びとなった。
ただ、インラック政権が12年4月にバンコクなど一部地域で法定最低賃金の約40%引き上げを実施、さらに13年1月からは全国一律でバンコクと同額(1日300バーツ)となった。労働力不足も顕在化しており、カンボジアやラオスにタイの分工場を造作り、タイのマザー工場で最終製品を作る分業体制が今後、さらに広がりそうだ。(宮野弘之)