政府が決めた5兆5000億円規模の経済対策は、来年4月の消費税率引き上げ後の景気減速を最小限にとどめることが最大の目的だ。このため、家計支援策だけでなく、企業の競争力強化策、景気浮揚に即効性が期待される公共事業も盛り込み、念には念を入れた形だ。だが、全体的に総花的で、政策の実効性には疑問符がつく。
家計の負担増への配慮では、子供や女性、若者、高齢者という幅広い世代への支援策を用意した。また中小・零細企業への支援策を盛り込み、景気回復の実感が遅れている地方経済への目配りも欠かさなかった。
ただ、家計向け施策の事業規模は1兆円。競争力強化策の13.1兆円、復興や防災・安全対策の4.5兆円と比べ見劣りする。生活費の負担軽減という国民へのメッセージとしては力不足といわざるを得ない。
競争力強化策も、2020年の東京五輪開催決定に伴う交通網の整備などを除けば、各省庁の既存事業をかき集めた印象は否めない。農業や医療分野の規制緩和など構造改革を伴う産業の大転換を図る政策は提言されなかった。投資マネーを呼び込む金融機能の強化や、都市の中心部に生活機能を集約させるコンパクトシティの推進も、中期的な課題として示すにとどまった。