年末の平成26年度予算編成をめぐり、自民党内で「国土強靭(きょうじん)化」関連予算獲得に向けた動きが活発化している。旗振り役の二階俊博・党国土強靱化総合調査会長は「国民の命を守るのが政治だ」と主張し、野党側の「バラマキ路線」批判もどこ吹く風。来年4月からの消費税率引き上げという「打出の小づち」を手に入れ、色めく党内の歳出圧力は強まるばかりだ。
■二階氏が旗振り役
二階氏が会長を務める自民党二階派の議員らは今月10日、東京湾の塩害で劣化が進む東京・品川区の首都高速道路を視察した。
「直下型地震が起きたときのことを考えると、本当に恐ろしい。われわれには大きな宿題がある」
二階氏が視察後、防災・減災の必要性からインフラ整備を急ぐよう主張すると、議員らは一様にうなずいた。さらに「東京五輪があるから、余計に整備をやらなければいけない」と力を込めると、うなずきはさらに大きくなった。
■ふくらむ概算要求
国土強靱化は、東日本大震災を教訓に自然災害に強い国土づくりを目指す安倍晋三政権の主要政策の1つだ。インフラ整備が遅れている地域では予算増への期待がふくらむ。このため、耐震化など国土強靱化に関連する来年度予算案の概算要求額は前年度比1・42倍の5152億円に上った。
実は歳出圧力の背景には昨年8月に成立した消費税増税法がある。同法付則に「消費税率の引き上げによる経済への影響を踏まえ、防災、減災に資する分野に資金を重点的に配分する」と明記された。増税で生じた財源の「ゆとり」分について、国土強靱化関連予算への「流用」が許されると解釈されているのだ。
増税分をそのまま社会保障費に使うとしてきた目的がかすんでしまうが、二階氏は「財源がないから何もできないでは政治にならない。財源よりも命が大事だ」と一歩も譲らない。
■本音は景気浮揚?
しかも、二階氏が会長を務める近畿地域選出議員団は8日、JR東海が平成39年に東京-名古屋間の開業を目指すリニア中央新幹線について、国費を投入して大阪まで同時開業するよう求める決議文を採択した。
名古屋-大阪間は57年の開通予定で、前倒し開業は経済効果を狙った公共事業推進の意味合いが濃く、防災・減災のために不可欠な国費投入とは言い難い。
そもそも、二階氏らが15日召集の臨時国会で成立を目指す「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」は、防災・減災事業と景気浮揚を念頭に置いた事業のどちらが主目的なのか、線引きが曖昧だ。
そうした自民党内の動きに対し、野党側は「どのように不要不急の公共事業を廃止し、税金の無駄遣いをやめようとしているのかが見えない」(民主党の大畠章宏幹事長)と批判を強めている。
二階氏は臨時国会で衆院予算委員長として、国土強靭化関連予算案をめぐる与野党論戦を見守ることになるが、やきもきする日々が続きそうだ。(岡田浩明)