今回の基準地価では全国的に下落幅が縮小した。牽引(けんいん)役は東京、名古屋、大阪の3大都市圏で、東北被災地の一部のような例外はあるものの、地方圏では調査地点の9割が下落して格差が拡大した。2020年東京五輪の開催決定を受け、今後は東京周辺の地価上昇が見込まれ、すでにその兆しも出ている。
選手村の建設予定がある東京・晴海で、三菱地所が昨年4月から分譲しているタワーマンションは五輪決定後、申込件数が従来の3倍に跳ね上がった。不動産大手首脳は「五輪による再開発で国内外の投資が進めば、地価の上昇基調は続く」とみる。
地方でも札幌市や宮城県などでは競技会場の計画がある。これをバネにして旅行者を呼び込み、にぎわいを作れば、経済波及効果が生まれて地価上昇につながるとの期待もある。
懸念されるのは、こうした「特需」が、五輪終了とともにしぼむこと。みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは「五輪後に関連施設の活用が進まなければ、地方と都市部の格差がますます広がりかねない」と、終了後も見据えた都市開発の必要性を指摘する。