6月の消費者物価の上昇は円安による影響が大きいが、5月よりも宿泊料が値上がりするなど個人消費の堅調さも確認された。株高などが消費者の財布のひもを緩ませ、デフレ脱却に向けて日銀が導入した「異次元」の金融緩和の効果がじわじわ出始めている。ただ、賃上げの動きは鈍く、「2年後に2%」という日銀の物価上昇シナリオの実現は、なおハードルが高い。
日銀のアンケート(6月調査)によれば、1年後の物価が「上がる」と回答した人の比率は80%超を占める。実際、6月の国内企業物価指数も1.2%上昇しており、企業が小売りに上昇分を転嫁すれば消費者物価はさらに押し上げられる。
日銀は2013年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)をプラス0.6%と予測するが、「達成の可能性が高まった」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長)との見方は多い。
ただ、賃上げを伴わないままモノの値段が上がれば家計を圧迫し、安定的な物価上昇にはつながらない。厚生労働省によると基本給など5月の所定内給与は前年同月比0.2%減と12カ月連続でマイナス。日銀の物価上昇目標の達成は「賃金も上昇する必要があるため困難」(SMBC日興証券の宮前耕也エコノミスト)との指摘も多く、回復傾向にある企業業績をいかに賃金上昇に結びつけるかが、日銀のシナリオ実現の鍵を握る。