【ビジネスアイコラム】
6月下旬、銀行の株主総会で地味ながら重要な議題が付議された。「金融機関が破綻したときのベイルイン条項の導入」である。「ベイルイン条項」とは、金融危機で金融機関が債務超過に陥った場合、無担保債権の元本の削減や株式への転換条項が付いた債務について、強制的に債務カットが行われる仕組み。つまり、株式や無担保の債券などを持つ投資家が負担を強いられることになる。
この仕組みは2008年9月のリーマン・ショックの反省から、金融安定理事会(FSB)で決定された国際的な枠組みで、日本においても関連する預金保険法の改正が行われた。また、国際的な銀行の自己資本の新たな枠組みである「バーゼルIII」において、「ベイルイン条項」が付された債券などでなければ自己資本として組み入れられなくなった。例えば、みずほフィナンシャルグループ(FG)の株主総会では「バーゼルIIIにおいて、銀行持ち株会社が発行する優先株式が自己資本比率規制上の自己資本として算入されるためには、当該銀行持ち株会社が実質破綻が認められる場合に、(1)元本の削減又は(2)普通株式への転換が行われる条項(いわゆる損失吸収条項)を当該優先株式の要項に定める必要があります」と定款変更の理由を上げている。
本来、銀行が債務超過に陥った場合、株式は紙くずとなるのが筋だが、これまでは優先株や劣後債の投資家が負担するのは「裁判所が認定した場合」に限られ、株主の利益や劣後債などの債権者の利益が保護されるケースも少なくなかった。だが今後、状況は一変する。
では現実問題としてメガバンクなど日本の銀行が破綻するケースはあるだろうか。にわかに信じられない想定であるが、あるとすれば日本国債が暴落するという悪夢の局面であろう。