通商政策のカギを握る環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への対応で、新政権は発足直後から正念場を迎える。交渉参加に向けたタイムリミットが間近にもかかわらず、踏まなければならない手順が残っているためだ。政府内では「このままでは交渉に乗り遅れる」と焦燥感が募る。
「(TPPについて)日米首脳会談でしっかり議論していきたい」。安倍晋三首相は政権発足前の18日、経団連幹部との懇談会でこう述べた。
安倍首相が約1カ月も先の首脳会議での進展を示唆したのは「タイムリミットを意識して産業界の懸念払拭に動いた」(政府関係者)ためとみられる。実際、日本の交渉参加はほぼ「時間切れ」の状態だ。
参加11カ国のTPP交渉は今月12日までニュージーランドで開いた会合で、2013年中の交渉妥結を目指す方針で一致。「来年10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が大きな節目となる」(外務省)。残り時間が約10カ月となる中、3月にシンガポールで開催される次回の交渉会合からは、関税撤廃の例外品など個別分野で“詰め”の議論が交わされる公算が大きい。