だが、先の和紙メーカーの担当者は「申し込みをしておいてラッキーでした。今後は軸足を東南アジアに移していくつもり」と力を込めて語った。中国に2カ所ある拠点については順次縮小し、経営資源をタイなどに集中したいという。
中国での反日暴動をきっかけとした日系企業の東南アジアシフトは、日を追うごとに顕著になっている。10月下旬に開かれたタイ最大級のフードサービス業界展示会でも、日本人バイヤーの姿が目についた。
東京から来たという輸入業の男性は、総菜など冷凍品の調達ルートを今後は中国からタイに変えたいと考えている。「暴動以来、日系企業というだけで中国人サプライヤー(商品供給者)の態度が変わった。2年前の暴動に続き今回が2回目。もうリスクは負えない」
これまで中国市場に巨費を投じてきたにも関わらず、日系企業が中国から距離を置こうと考え始めたことには理由がある。いちばんは人件費。かつては「中国の絶対的な優位点」とされた低賃金は高騰を続け、平均的な人件費は5年前の2倍にも膨らんだ。