豊作でもコメの値段が下がらないのはなぜか。原因の一つは販売ルートの多様化だ。
農協以外の集荷業者が増えたほか、インターネットによる直接販売も拡大し、販売ルートが細分化したため、市場の在庫調整力が低下している。11年産米は、こうした環境の中、震災に伴うコメ不足で高値を見込んだ農家や集荷業者が「各ルートで一斉に在庫を滞留させてしまった」(大手卸)結果、値段がつり上がった。
さらに今回は、販売ルート多様化のあおりで、11年産米の集荷が低調に終わった全国農業協同組合連合会(全農)グループが、農家への前払い金を1~2割上乗せ。これが新たな価格の押し上げ要因になっている。
全国集荷量の3~4割を占める国内最大の全農の影響力は大きく、「新米の出回り不足もあって、そのまま高値がまかり通っている」(流通関係者)というわけだ。
ただ、今後は高値が崩れるかもしれない。ある農水省幹部は「コメの不足感は薄れた」と打ち明ける。12年産米も当初は出回りが不十分だったが、現在は出荷量も増えた。