【石平のChina Watch】
今月13日に中国・成都市で開かれた経済関連の国際フォーラムで、西南財経大学経済学院の院長で、同大学所属「中国家庭金融調査と研究センター」の主任を務める甘梨教授は、自ら行った研究調査の結果として、「現在の中国では、上位の10%の家庭が民間貯蓄の75%を有している」との数字を披露した。
この衝撃的な数字が各メディアによって大きく報じられ、中国の国民は改めて、この国の格差拡大の深刻な実態を認識した。実は上述の研究センターが今年5月に発表した『中国家庭金融調査報告』で55%の中国の家庭が貯蓄をほとんど持っていないことが分かっているから、格差が拡大している中で、半分以上の中国家庭は「貯金ゼロ」の極貧状態に陥っていることが分かった。
このような現実からさまざまな問題が生じてきている。まず経済の面では、今後の成長の牽引(けんいん)力として期待されている「内需の拡大」が難しくなっている。「貯金ゼロ」55%の中国家庭に「内需拡大」を期待するのは最初から無理な相談だし、貯蓄の75%を持つ1割の裕福家庭の消費志向はむしろ海外へと向かっているからだ。
たとえば「中国財富品質研究院」と称する研究機関が行った最近の調査によれば、中国国内の富裕層の67%は現在、海外での不動産購入を考えている、もしくは購入しているという。