そこで、消費増税とセットで日銀法改正案を提案しようと、安倍晋三元首相グループなどが自民党内の説得を進めている。民主党執行部も、小沢グループとは距離を置いている脱デフレ議員連盟グループを取り込むため、日銀法改正は説得手段になりうる。
不気味なのは、財務官僚の出方である。与野党議員に対して圧倒的な影響力を持つ財務官僚の工作次第では、これまで無関心だった議員も前向きになる可能性がある。財務官僚にとってみれば、まず、最優先する消費増税法案を成立させることだ。ついでに、現行日銀法とともに失われた日銀への支配力を回復できればそれに越したことはない。今はまだ音無しの構えだが、そう小ざかしく計算しておかしくない。
こうみると、「日銀の独立性」は政官の思惑に比べるといかにも軽いようにも見えるが、国際的な量的緩和に背を向け、自前の理論に固執するだけで一向に脱デフレの成果を挙げられない日銀の分は悪い。他方で、大型増税自体、デフレ・円高要因だ。政治家が日銀をせき立てるだけでは日本は再生しない。改正派議員は金融と同時に、増税路線も厳しくチェックすべきだ。(編集委員・田村秀男)