相次ぐ輸入米導入の背景には、国産米の取引価格上昇がある。全国農業協同組合連合会(JA全農)が今月2日から卸会社などに提示している基準価格は前年同期と比べ、ササニシキ(宮城)が20.9%上昇、あきたこまち(秋田)が23.0%上昇と軒並み2割程度アップしている。原発事故の影響の広がりを懸念した卸会社などが、早めにコメを確保する動きを強めたことなどが要因のようだ。
農林中金総合研究所の藤野信之主席研究員によると、コメの仕入れコストは外食企業の売上高の3.9%を占め、「コメの取引価格が2割上がれば、営業利益率を1%弱押し下げる」という。ファミリーレストランでも「ガスト」を展開するすかいらーくや「ロイヤルホスト」のロイヤルホールディングスも、輸入米導入の可能性を否定していない。
日本は94年に妥結したウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)の結果、コメの高関税を守る代わりに年77万トンのコメを「ミニマム・アクセス米」として特別枠で輸入。主食用はこのうち10万トンで、輸入する商社と買い手である卸会社などが連名で申し込む売買同時入札(SBS)を経て国内業者に売り渡される。この枠組みで2010年に輸入した中国産米の価格は、国産米の取引価格と比べて3割近く安かった。国産米の取引価格上昇によってこの価格差がさらに開いたことで、10年度に9回の入札で約3万7000トンにとどまった落札量が、11年度は4回で10万トンに達した。
異例の大手参画
主食用の輸入米はこれまでも、小規模な弁当店や中小企業の社員食堂などで消費されてきたとみられるが、流通・外食の大手が参画するのは異例だ。
ただ、輸入米人気のきっかけになった国産米の取引価格上昇は「放射能に関する風評は緩和方向にある」(藤野氏)として、持続しないとの見方も少なくない。