財務省が22日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は329億円の黒字になった。1月は単月で過去最大の赤字(1兆4768億円)だったが、2月は昨年9月以来5カ月ぶりに黒字転換した。東日本大震災、円高、タイ洪水の「三重苦」が緩和され、輸出の減少に一定の歯止めがかかった。ただ、原油価格の高止まりや原発停止に伴う火力発電用の液化天然ガス(LNG)の需要増が輸入額を押し上げる構図は続いており、赤字基調からの脱却とは断言できない状況だ。
「輸出は緩やかながら持ち直しているとみていいだろう」。野村証券の木内登英経済調査部長は2月の貿易収支をこう評価する。輸出額は前年同月比2.7%減の5兆4409億円と5カ月連続のマイナスだったが、減少幅は1月(9.2%)から縮小した。震災で打撃を受けた生産が回復し、歴史的な円高の是正も進み、輸出企業の逆風がやわらいだ。財務省は「タイの洪水で輸出できなかった分が回復した影響もある」としている。
地域別にみると、景気が上向きつつある米国向けは11.9%増で、一昨年12月以来の高い伸び。特に自動車輸出が26.9%増と好調だった。これに対し、債務危機拡大の懸念がくすぶる欧州連合(EU)向けは10.7%減、アジア向けが6.6%減と明暗が分かれた。